書きかけのまま止まっているストーリーテキストファイルが山のように眠っていて、ほとんどは大したものじゃないのですがいつか別の機会に活かせるかもしれない、という理由で全部取っておいてはいます。ただその中で一つだけ、「これはもう絶対に続きを書くことはできない」と確信できるものが見つかったので20周年のお蔵出しと作品の供養を兼ねて途中までですが公開してみました。これを書いてたのがいつ頃だったのかはっきり覚えてないのですが…内容の古さから推測すると1999年~2000年くらいかと。当時SEかプログラマにでもなるかと参考書を買って勉強を始めたらなぜかハッキングの世界に興味が移ってしまい、そっち系の本ばっかり買って読んでたことだけはなんとなく覚えています。それで書き始めてみたのが「女子高生がハッキングをする」というラノベテイスト溢れる、でもテクニカルな部分をしっかり書けば絶対に面白くなりそうな話だったと。プロットテキストを今読んでみても我ながら中々悪くないストーリーでした、女子高生があらゆるFirewallを無効化する悪魔のツールWallBridgeを作り世界をパニックに陥れるというクライマックスはラノベ的外連味に溢れていて素直に「読んでみたいな」と思える内容ではあるのです。あるのですが、書いているうちこの作品の弱点というか「なぜ他に同じ方向性(ガチのハッキングもの)の作品を書く人がいないのか」の理由をすぐに思い知らされ、あっという間に筆が止まりました。PC業界の時間って、通常の3倍どころじゃないとんでもない早さなんですね。僕がこの話を書いていた時のWindowsの最新VerはWindows98でしたが、プロットを練ったり参考書を読んでいるうちにもうWindows2000の発売のニュースが出ました。テレホーダイは廃止になりADSLが爆発的に普及し、企業のサーバはRAIDの構成が当たり前になりそのうちクラウド化の流行がやってきたりと、もう前提となる環境が数ヶ月単位でコロコロコロコロ変わっていくんです。そりゃこんなのアホくさくて書けないですわ。注釈集を見るとNUKEだのconconだの当時のWin95世代でさえほとんど知らないマニアックだった単語が、死語というにもおこがましい古代文明言語のごとく載っていたので一周回って案外面白く読み返すことができました。本編はほんとに序盤だけで終わっていてそんなに面白くないと思うので、お忙しければせめて注釈集だけ見てっていただければと思います。かつてこういう文化があったのだ、というのを眺めるだけでまあまあ知的好奇心満たされますよ。