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 20年前にこの絵を見たことがある、という人はそれだけでかまくら通を名乗る資格があると言えましょう。これは1999/9/1~9/30くらいまでのわずか一ヶ月間、一日10ヒットかそこらの出来たてホヤホヤ新興無名ホームページだった頃にトップ画として載せていた僕の絵です。22歳の頃買ったばかりのWindows95マシンに(それまではPC-98を使っていました)、よくわからんメーカーのPhotoshop劣化版みたいなお絵かきソフトを入れてマウスで描きました。マウス手描きだから…とついつい言い訳を並べたくなってしまいますが、まあ僕の画力など所詮こんなもんです。見るべきところも特にない凡庸な絵だけれど、笑えるほどド下手ってほどでもない。一言で言えば典型的な初心者の習作ですね。これでも10代の頃は将来漫画家になりたいと思って授業中ノートに絵を描きまくってきたのですが、その成果がこの程度ですから早々に見切りをつけたのは英断だったのでしょう。今でも落描きをするのは好きですよ、息子にしょうもない即興四コマ漫画を描いて遊んであげたりしています。人に見せられるほどのものではないのでここに載せたりはしませんが。
 でも20年経った今となっては、ホームページ運営なんて結局自己満足の遊びだったんだから下手な絵でも小説でも音楽でも批判や嘲笑を恐れずバンバン載っけていきゃ良かったんだよなという、後悔というほどでもないけれど「もったいないことしたかもな」という未練的な感傷がちょっとだけ残っていたりしています。少なくとも僕の文章力は当時毎日更新して人に見てもらいそのたび賞賛や批判をもらい経験を積むことによって確実に上がりました、たぶんサイト管理人からライターや小説家等に転身した方々なら全員感じていることだと思いますが結局「人に見てもらう」以上に経験値を積める修行はないんです。漫画家だってデビュー当時ド下手だった人が連載を続けていくうちにどんどんスキルアップしていって気がついたら一流プロレベルの絵柄になっていた、という例が数え切れないくらいあるわけで。僕の絵だって22歳の時点でこんな程度でしたが、何度も何度もサイトで新作公開し続けていればめきめき上達し目標だった漫画家になれた可能性がゼロではなかったかもしれない…なんて思ってみたりもしてしまうわけです。まあ当時の僕はサイト更新に毎日3時間くらいかけてましたんで、そこにさらに絵を描いて載せてなんてとてもとてもできなかったし現状に何か不満があるわけでもなんでもないので、本当にただの感傷に過ぎないのですが。あそうそう、女の子のかわいい表情を描くのは得意ではありませんが綺麗な乳首を描くのは自信があります。女性器は…現物を見たことが当時なかったので描こうにも描きようがありませんでした。乳首をたくさん描いた気持ちの悪すぎるデスノートは昔どこかで「秘密のポエムノートを江ノ島の砂浜でまとめて焼いた」という話をした覚えがありますがそのとき一緒に燃やしました。僕が10代の多くの時間を捧げて残した乳首絵とポエムが夜の黒海に白煙となって溶けていく様は一遍の小説にできそうなくらい幻想的ではあったのですが、当時の僕は「警察が来たらマジヤベエ、早く燃え尽きろ燃え尽きろ」と超焦りながら棒でノートをつつき回していたのであんまり締まりの良い物語にはならなさそうです。

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  (……か)

 えー今まで「モテなくなると困る」という理由でこの20年ほとんど話題に触れずに来ましたが、もう40歳過ぎていい加減オフパコに固執していても何も起きないどころかそのうち頭をバットでパコられて永久追放される未来しか見えてこないので、もうそろそろ諦めて今回は「結婚」について喋ろうと思います。

          (ん)

 妻に初めて出会ったのは僕が23歳大学四年生の頃で、馴れ初め的なことは書くと僕が恥ずかしいだけでなく妻に確実にしばかれるのでそこは省略させていただきますが、結果だけ言えば僕が猛烈に惚れて告白し押し切るような形で付き合っていただくことになりました。どうも妻的には僕が一時的にのぼせているだけで、冷めたらあっさり離れていくのだろうと身構えていた部分があったみたいです。まあ当時の僕は23年間女の子と付き合ったことがないどころか会話さえろくにしてこなかった拗らせ童貞でしたし、妻は僕のホームページのことは読んで好感を持ってくれていたとしても僕という人間自体のことはまだほとんど知らなかったわけです、警戒しないほうが無理な話だろうと思います。

                    (し)

 でも僕は頑張りました。なにしろクソ童貞だったので努力の方向性が正しかったのかどうかは今も良くわかってません、わかってませんが僕が妻のことをどれだけ好きなのかはたくさん言葉にして伝えたし、喜んでもらうためにできることは何でもやってきたつもりです。どの時点くらいから妻が僕の気持ちを信じてくれるようになったのか、それは僕にはわからないし妻自身にもわからない可能性さえありますが最終的に僕の努力は実り、妻はどんどん飾らない自分を、素直な喜怒哀楽を僕に見せてくれるようになりました。それが嬉しくてたまらなくて、もっともっと好きになってもらいたくて、いろんなことを考えては実行しその笑顔を見ることがいつしか僕の人生で最も優先順位の高いことになっていることに気がつきました。だってそうでしょう、好きな人に喜んでもらって好きになってもらう、それ以上楽しいことなんてこの世の中に他にありますか?

                             (さ)

 そもそも妻は僕がサイトで常日頃萌え萌え口にしているようないわゆる白痴キャラとは若干…いやだいぶタイプが違います。ぱっと見は真面目で下品な冗談なんて嫌いそうで、実際のところ社会常識や金銭感覚のしっかりしたいいとこのお嬢様というのが僕の第一印象でした。でも話していると案外子供っぽくて抜けているところがある。お酒を飲むと防御力が下がって甘えたがりな一面を無邪気にさらけ出してくれる。そんなギャップに当時の僕はやられ、今なおやられ続けています。妻が可愛くて困る件、というタイトルでラノベを一本書きたくなるくらい、僕の妻は可愛いんです。お見せできないのが残念で仕方ありません。

   (れ)

 このサイトを20年続けている間に、「ユキオ」という名前の男にテキストの中で数え切れないくらいの変態行為をさせ、時には真面目な話をさせ、そして架空の恋愛をさせてきました。僕の恋愛に関する文章を読めば一目瞭然だと思うんですけど、僕って超がつくくらいのロマンチストなんですね。物語の中のユキオ君はいつも好きな人を一途に思い続けていて、好きな人の幸せのために身を削ることを厭わない。そういう僕が格好良いと思う男の理想像が、恥ずかしいくらいくっきり表れてしまっている。もちろん現実の僕は物語に描く理想像のように上手く立ち回ることはできないし、気の利いた台詞もなかなか言えません。選択肢を間違えて妻を不愉快な気分にさせたり怒らせたりしてしまうことも日常茶飯事です。でも理想通りにはいかないとしても、そこに届きたいと願い試行錯誤する努力を怠ったことはないと思っています。僕は自分の容姿の悪さも性格の不甲斐なさも誰より良く知っています、そのままの自分を見せているだけでは足りないことも、いつか愛想を尽かされてしまうことも良く知っています。だから何度でも好きだと気持ちを口にするんです、好きになってもらうためにできることを面倒がらずにやるんです。それをずっと続けていくことが僕にとっての恋愛であると本気で信じているし、逆にそれができない人たちの口にする愛という言葉を信じていません。テレビで芸能人が破局、とかニュースを見るたび「当たり前だバーカ」とついつい悪態をついてしまいます。

        (て)

 妻と出会って結婚して子供を作って、ここまで…18年? 19年? もはや時間の感覚さえ曖昧になってきていますが、妻を好きだと思う気持ちは出会った頃とほとんど変わっていません。そりゃ23歳の頃のギラギラした熱を今も持っているかと言われればもう持ってないですけど、その代わりにここまでに築いてきた揺るぎない信頼関係が決して冷めない穏やかな熱をこの胸に与え続けてくれているのを日々感じています。子育てに追われている今は昔みたいに妻のためだけにリソースを割くことはできないけれど、現実的なこととして家事でできることはできるだけやっているつもりだし、妻に何かお願いされて断ったことは(たぶん)一度もないはず…買ってきてと言われて忘れて帰って謝ったことは何度もあるけど。でも妻はそれを怒らないし、僕がやろうかと言ったことも大抵のことは「大丈夫、ありがとう」と言ってくれる。僕が投げかけた愛情はきちんと受け止めてくれて、その倍くらいの深い愛でもって返してくれる。僕が選んだ妻はそれができる素晴らしい女性なんです。この人を好きになって良かった、と心から思える結婚ができた僕は本当に幸運だったと思います。ろくな人生じゃなかったけど、その出会いを与えてくれたことだけは神様に感謝したい。

             (い)

 …と言いながら僕はちょびっツに始まりこの20年で数百人規模の2次元美少女に萌え狂い、情欲を爆発させてきました。もちろん積極的に妻に「俺…今はこの二次元女子が好きなんだ」なんて言ったことはないです(言ってたらただのキ○ガイでしょう)、ただまあなにしろ妻はこのサイトの存在を知っていますので全部筒抜けでバレてたわけですが、でも「オタク同士の恋愛は長続きする、三次元の浮気をする必要がないから」という俗説は僕個人のケースに限って言えば結構真実を突いているように思います。

 (る)

 人間誰だって素敵な異性を見ればそりゃ恋人の有無に関係なく胸ときめきますよ、そんなん当たり前じゃないですか。でも二次元美少女に適度に胸をときめかせ続けていれば、リアルで付き合っている恋人の「三次元一位」の座は揺るがないわけですよ。それとこれとは別、とお互いが考えて適度に息抜きできた方が恋愛って効率良く続けられると半ば確信しています。妻は妻で昔はテニスの王子様ミュージカルにハマり今はなんだか良くわからん美少年ソシャゲを複数こなして声優ライブ的な動画をPCでこっそり…いや全然隠す気なく観てるみたいです。そういうお茶目なところも可愛いな、なんて思ってもいるのですがそれは口にしてもあまり良い結果を生みそうにないので黙って見守っていますが。

                   (た)

 小学生になった息子は未だに「おかーさんだいすき」といって所構わず妻に抱きついたり頬にキスしたりといったストレートな愛情表現をしていて僕はもちろんそれを微笑ましく見守っているのですが、「俺がやりたくて我慢してることを堂々とやりやがって羨ましいなコイツ」と嫉妬する気持ちがわずかに芽生えてしまう、それくらい妻のことが好きです。以前実際にそう思っていることを伝えてみたこともありましたが、バカじゃないの、とジト目で見られてそれっきりになってしまいました。僕はまた選択肢を間違えたのでしょうか? それとも妻に少しでも喜びを与えることはできたんでしょうか? 答えはわかりません。これほど長く一緒にいてさえわからないことがまだまだたくさんあります。でもそれが楽しい。一緒にいてふざけあえることが、好きでいてもらうためにできることがまだあることが、とても嬉しい。

                          (す)

 そろそろ妻と出会ってからの時間が、出会う前に過ごしてきた23年間を追い越しそうになっています。感慨深いものはありますが、後悔といった類の感情は全くありません。妻のいなかった僕の23年の人生の価値なんて、今日妻に優しくしてもらった一日の価値に遠く及ばないと本気で思っています。きっとあっという間に子供は成長し僕らの元を離れていき、老いた僕らは恋愛がどうこうなんて口にするのも恥ずかしくなるような容姿になっていくのでしょう、いや既にもうそうなっていると言われてしまえばぐうの音も出ません。でも僕は60歳になっても70歳になってもたぶん変わらずに妻に好きだと言い続けるだろうと思うし、またバカなことを言ってと少し困ったような顔で笑う妻の顔を見ることが楽しいと、幸せだと思い続けることができると思います。妻が僕との老後のことまでどう思っているのかは聞いたこともないので知りません。でも僕が大事に思い優しくあり続ける限り妻はそれに答えてくれる、それだけは確信しています。だから今の僕は未来が怖くないんです。妻と一緒に老いていき、長い時間をかけてもっと多くのものを積み重ねていけることが、こんなにも待ち遠しく思える。今それを伝えても、きっと妻はハイハイそうですねなんて言ってまともに取り合ってくれないだろうけど。わかっていてもやっぱり伝えてしまうのが僕の今までのやり方だったし、妻もきっとそのやり方を悪くは思っていないからここまでやってこれたんだろうと。そんな風に思いながら、僕は妻と毎日を過ごしています。

(け)

 そういうわけなので、残念ながらもはやリアルのネット女子が「雪男さん素敵! 抱いて!」なんて迫ってきたとしてももう遅いのですよ残念ながら。まあ対話のドアはいつでも開いているということだけは念のため伝えておきますが。

                      

   (て)